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6月16日 ルンガ沖航空戦72年(宮野善治郎大尉戦死)

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昨年の投稿を、若干修正して再掲します。

今日、6月16日は、昭和18年、ガダルカナル島上空で日米両軍の航空部隊が激戦を繰り広げた「ルンガ沖航空戦」から72年。

我が母校、大阪府立八尾高校の前身、八尾中34期の大先輩で二〇四空飛行隊長の宮野善治郎海軍大尉(戦死後中佐)が零戦隊を率い戦死した日です。

72年前のこの日、ガダルカナル島ルンガ泊地の敵艦船を攻撃するため、五八二空の艦爆24機(指揮官・江間保大尉)を二〇四空、二五一空、五八二空の戦闘機計70機が護衛して出撃しました。

総指揮官は拙著『祖父たちの零戦』(講談社文庫)の主人公の一人で五八二空飛行隊長、進藤三郎少佐。


戦闘の詳述は避けますが、この日は米軍も、104機もの戦闘機を迎撃に発進させており、彼我入り乱れての約30分におよぶ大空中戦の結果は、のちに大本営より、
『大型輸送船4隻、中型輸送船2隻、小型輸送船1隻、駆逐艦1隻、いずれも撃沈、大型輸送船1隻中破、飛行機34機以上を撃墜』

またこの戦闘を「ルンガ沖航空戦」と呼称する旨発表されましたが、実際の戦果は、米側記録によると輸送船1隻が大破、戦車揚陸艦1隻が火災、飛行機6機だけだったといいます。


一方、日本側の被害は深刻で、艦爆未帰還13、不時着2、戦闘機未帰還15、不時着4、大破2に及んでおり、戦死した15名の戦闘機搭乗員の中には、二〇四空飛行隊長宮野善治郎大尉(海兵65)や、昭和15年9月13日の零戦初空戦で、その時も指揮官であった進藤三郎大尉(当時)の三番機を務めた大木芳男飛曹長(操練37)など、日本海軍の至宝ともいえるベテラン搭乗員たちがいました。


宮野大尉(戦死後中佐)は、海軍戦闘機隊屈指の名指揮官として知られますが、私の母校、大阪府立八尾高校(旧制八尾中学)の先輩で、宮野氏が旧制中学34期 (同期生には、プロ野球巨人軍の永久欠番4の黒澤俊夫や、元祖甲子園アイドル、14歳エースの稲若博がおり、前後数年のクラスには、ゴジラ生みの親のプロデューサー、田中友幸や塩じいこと塩川正十郎元財務大臣などがいます)、私が新制高校34期、生まれ年が宮野氏が大正4年の卯年で私がその48年後の卯年、生家も徒歩15分ぐらいのところにあって(宮野大尉の家はまだあり、勉強机も残っています)、家紋も一緒という、不思議なご縁を感じています。

宮野大尉の御姉様によると、その日、神棚の護符が風もないのにパタリと落ち、母親が、 「あ、今善治郎の飛行機が落ちた!」と言ったそうです。


宮野大尉については、光人社から『零戦隊長~二〇四空飛行隊長宮野善治郎の生涯』という600頁近い本を上梓しましたが、これほど上下を問わず慕われた人もめずらしいと思います。

部下の上官を見る目は厳しくて、多くの方のお話を聞いているとどこかで必ず悪口が聞こえてくるものですが、宮野大尉についていえば、元搭乗員はもちろん、整備科や看護科、主計科の人まで、ひとしく今も敬愛の念を持っておられるようです。


ある人の名前を出したときの相手の表情で、その人がどう思っているかというのは大体わかるものですが、「宮野大尉の後輩」というだけで、皆さん実になつかしそうに相好をくずされ、いかに慕われていたかが見て取れます。おかげでずいぶん得をさせていただきました。


宮野大尉が戦死した翌年に発行されたある雑誌に、「海軍戦闘機隊座談會」という16ページの大特集があります。出席者は、斎藤正久大佐、八木勝利中佐、中島正少佐、小福田租少佐、塚本祐造大尉、山口定夫大尉。そのなかで、
 小福田「宮野君が戦死した時はみんな泣いたさうだね」
 中島 「いゝ隊長だつたものね」
というくだりがあって、宮野大尉の戦死がいかに惜しまれていたかが窺えます。



この空戦を境にして、以後ソロモンの制空権は完全に敵手にわたることとなります。
私が零戦搭乗員の取材を始めた約20年前には、この日の空戦の総指揮官、進藤三郎少佐をはじめ、渡辺秀夫上飛曹、中村佳雄二飛曹など、何人もの当事者がご存命でしたが、空戦そのものに参加された方は、少なくとも二〇四空ではいらっしゃらなくなりました。



以下、補足。



宮野善治郎大尉の生年月日について、取材をしない著者による「大正6年3月2日」説がまかり通っているようですが、これは完全なる間違い。そんなものを鵜呑みにしてはいけません。宮野善治郎の生年月日は大正4年(1915)12月29日。本人の奉職履歴、海軍兵学校関連、家族、出身中学すべてにおいて確認できることです。念のため。(写真は奉職履歴)

 



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